呪イノ少女、鬼ノ少女
「何があったかは知らないけど、喧嘩はダメ」


そういいながら、茜はカレーを掬ったスプーンを口に運んだ。


「まあ、雛が気に食わないのは良く分かるけどさ」

「気に食わないのは母さんも同じよ」

「失礼な!誰が養ってやってると思ってるの!」

「私を養うのは親として当然の義務!でしょ、澪さん?」

「わ、私に言われても…」


同意を求められても答えられるわけがない。

しかし、そんな雛子も雛子だが、娘に向かって気に食わないという母はどうなのだろう。


「泣かす!」

「やれるもんならっ!」


その内、物騒な言葉が飛び交い始める。

かと思うと、とうとう立ち上がって取っ組み合いが始まってしまった。


たった今まで喧嘩はいけないと言っていたのはどの口だろうか…。


「大体あんたは最近文句が多いのよっ!」

「母さんが母さんらしく無いからでしょうがっ!」


この母娘、出会った時から頻繁に喧嘩ばかりしている。

本当に関係が悪い、というわけでは無い。

そうやって喧嘩ばかりなのは、二人ならではの親子のスキンシップなのだろう。


とはいえ、一人そんなスキンシップに取り残された澪には、所在無げにカレー掬って口に運ぶしかないのであった。


「…なんか疲れた」






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