呪イノ少女、鬼ノ少女
「ふん」


黒丞は、外向きに再度指を振った。

鬼たちが素早く二人から離れて、黒丞の傍らへと移る。


「っつ、分かんないな。師匠さー、つまんない説教垂れる為に来たの?というか、何で離す?」

「家に帰れ。その肩と娘の手当てをしろ」

「あのさ、意図が分からないんだけど」


いつの間にか気を失っていた雛子を全身で庇う様に前に出る。

血を失い、雨に打たれて下がり始めた娘の体温に焦りを感じる。


「元より命を奪うつもりなどない。俺の目的は、これとそこで伸びている珠祭だ。愛弟子に顔を見せたのはついでだ」


怯え、可愛そうな位に震えている澪と気を失ったまま少しも動かない九音。

その二人へと、鬼達の腕が伸びる。


「連れて行くつもり?」


相手の意図を悟って、弱り切った体に力を込める。


「そうだが。おいおい、阻むつもりか?娘が先だろう」

「そうだけどさー」


一刻も早く娘を安全な所へ連れて行くべきには違いない。

茜にとって、他の二人はあくまで他人なのだ。

だが、


「こっちも約束なのよねー」

「何?」

「その二人守ってくれってさ。透さんとの約束なの」



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