呪イノ少女、鬼ノ少女
「阻むのは構わんが、どうやるんだ?」

「どうするもこうするも、今の私に出来る事なんて一つしかない」


他に手などない。

あったとしても、血の回らない朦朧とした頭では名案が浮かぶはずもない。

ならば、逃げればいい。

ここで自己満足で倒れれば、後ろで死んだように動かない雛子が本当に死んでしまう。

それは嫌だ、耐えられない。

師の慈悲に縋って、みっともなく泣きベソかいて逃げ出せばいい。


そもそもの原因は、娘の事で頭に血が上ってロクな手も打たずに特攻を仕掛けた自身の愚策。

もはやみっともないなどと体裁を気にしていられない。


だというのに、やはり逃げ出そうとは思えなかった。


「娘を死なせたくないよ」


だが、透との約束は破れない。

ここで反故にしたら、きっと茜に残された透との僅かな繋がりが切れてしまう。

四十にも近いいい年した女が何を乙女チックな事をと気味悪がられるかもしれない。


「でも、愛だから」


堂々と胸を張って宣言してやった。

澪に手を掛けた四音の方を向いて言い切ってやる。


「くっ、くくく」

「ちょっと、そこの一つ目!笑うとこじゃないんだけどー」



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