呪イノ少女、鬼ノ少女
「私は、この子を甘やかし続けたのよ。上手く叱り方が分からなかったせいかな。泣かれたらどうしていいか分からなくってさ、だから叱らないで甘い顔ばかり見せていた」


子を導くの親の務めだ。

時に厳しく叱りつけ、時に優しく諭す。

そうして子供は自然と『強さ』を身に付け、独り立ちしていくものだ。


だが、茜はそうしなかった。

いや、出来なかったという方が正しい。


「一応の常識とか道徳は養父から仕込まれてたわ。けどさ、それをどうやって雛子に教えたらいいのか分かんなかったの」

「そんなの、ダメなことはダメって……」

「それが出来なかった。それで雛子が泣いたら?悲しい顔したら?そもそも、私ってこの通りだらしない性格じゃない?」

「茜さん…」


思いもよらなかった茜の本音に、澪は言葉を失った。

同じく言葉を失った大和と顔を見合わせる。


信じ難いことではあるが、この女は恐ろしく弱いようだ。

とんでもなく弱い。


「情けないわよねー。当代一の鬼祓なんて言われても、母親としてはポンコツ以下なんだから」


茜は自嘲し、深く溜息をつく。


だが、それでも雛子は真っ直ぐに育った。

言葉では教えられずとも、茜の自堕落な姿を反面教師に見続けたせいだろうか。

一般道徳、倫理、人の世で生きていく上で必要なルールはきちんと学んだ。


ただ一つ、重大な弱点を除いては。



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