呪イノ少女、鬼ノ少女
長かった坂を上り切った。

同時に膝に手をついて、大きく肩で息をする。


「はぁ…はぁ…」


山の中にふいにあらわれた広い空間。

そこを冷涼な風が吹き抜け、汗に濡れた毛先が流れた。


「ふぅ」


ようやく息を整えて、澪は折り曲げていた体を起こした。

同時に視線を前に向ける。


「あ…」


古いあばら屋。

何も語ることの無かった父の家がそこにある。

父のベールに包まれた過去が眠る家。


だが、澪の目は別のモノを捉えていた。



女だ。



袖の長い着物を来た女が父の家を見上げていた。

不思議な後ろ姿だ。

その儚げな背中から目が逸らせない。


「やっと来た」


その女がゆっくりとこちらを振り向いた。


女の片目が澪を捉えた。
視線と視線が交錯する。


「あなたは…」


女の片目が僅かにほほ笑んだ。


「やっと会えた、澪」
< 22 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop