呪イノ少女、鬼ノ少女
女ははっきりと澪の名前を口にした。

聞き間違いではない。

しかも「やっと」と女は確かにそう言った。


「あなたは誰?どうして私を知っているの?」


澪は得体の知れない恐怖を感じていた。

それは昨夜の「鬼」に感じたモノと同じだった。


だが女は答えることなく澪の方に向かって足を踏み出した。

片目を髪で隠していることが、余計に女の妖しさを際立たせている。


「あの、あなたは…っ」


もう手が延ばせば触れられる所まで来ている。

逃げたい。

なのに…足が動かない。


「ずっと」


長い袖から覗く、女の細い指が頬に向かって伸びる。


「ずっと会いたかった」


指が頬を撫でる。

そう覚悟した時。


「ご当主っ!!」


雛子の怒気の混じった声が響き渡った。

澪に触れようとしていた指が、一瞬戸惑い、それから力が抜けたようなダラリと下げられた。


女の片目が、間に割り込んで来た雛子を見下ろした。


「…九曜の娘」

「ご当主、今澪さんに何をしようとしたんですか!」


雛子は、敵意を剥き出しにご当主と呼んだ女を睨んでいた。

女はそんな雛子に興を削がれたのか、つまらなさそうにそっぽを向く。

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