呪イノ少女、鬼ノ少女
そろそろ降りた方がいい―――あれから、しばらく書斎を漁っていると、九音がそう提案した。
確かに外を見れば、青だった空が、灰色と白が混ざりあった機嫌の悪い色になっていた。
特に見る場所も無くなっていたので、二人で協力して家の戸締まりをしてから外に出る。
「来ない方がよかったかしら?」
山を中ほどまで降りた頃、九音が尋ねてきた。
「はい」
今の天気と同じくらいに澪の表情は鬱屈として冴えない。
年頃の娘には、父の隠れた趣味は少しばかり重すぎたらしい。
「私は来て良かったと思っているわ」
九音は鉛のように冷たく重い空に片目を細めながら、穏やかな表情を作った。
「あなたと会えたから。それは予め決まっていたことだとしても、やっぱり嬉しい事だから」
「九音さん、あなたはどうしてそんなに私を…」
澪は九音の聖女のような微笑みに目を奪われながら、そう零した。
「あなたが……あなただけが私を救う事が出来るから」
九音の指が顎にかかって、クイッと持ち上げられた。
彼女の深い闇色の瞳の中に、戸惑う澪が映り込んだ。
「九音、さん」
この女と目を合わせる度に呼吸が乱れる。
肺がまともに機能しなくなる。
「もう離さないから」
確かに外を見れば、青だった空が、灰色と白が混ざりあった機嫌の悪い色になっていた。
特に見る場所も無くなっていたので、二人で協力して家の戸締まりをしてから外に出る。
「来ない方がよかったかしら?」
山を中ほどまで降りた頃、九音が尋ねてきた。
「はい」
今の天気と同じくらいに澪の表情は鬱屈として冴えない。
年頃の娘には、父の隠れた趣味は少しばかり重すぎたらしい。
「私は来て良かったと思っているわ」
九音は鉛のように冷たく重い空に片目を細めながら、穏やかな表情を作った。
「あなたと会えたから。それは予め決まっていたことだとしても、やっぱり嬉しい事だから」
「九音さん、あなたはどうしてそんなに私を…」
澪は九音の聖女のような微笑みに目を奪われながら、そう零した。
「あなたが……あなただけが私を救う事が出来るから」
九音の指が顎にかかって、クイッと持ち上げられた。
彼女の深い闇色の瞳の中に、戸惑う澪が映り込んだ。
「九音、さん」
この女と目を合わせる度に呼吸が乱れる。
肺がまともに機能しなくなる。
「もう離さないから」