呪イノ少女、鬼ノ少女
「って感じです」
よく冷えた素麺を汁に浸しながら、澪は茜達に昼間の事を語っていた。
あの後、山の麓で九音と分かれるとすぐに雨が降り出したので急いで戻って来たのだ。
そのせいで雀の涙の体力も完全干上がってしまい、ついさっきまでぐっすりと夢の国を彷徨っていた。
「あははは、そぉー。九音ちゃんに会ったのねぇ。我が儘な娘だったでしょー?」
どこかに行っていたという茜は、くたびれたYシャツ姿で大笑いしながら、素麺を大量に腹の底へと流し込んでいる。
「母さん!ご当主をちゃん付けなんて、人に聞かれたら何て言われるか…」
そんな母親に反して、隣りの雛子は、ずっとしかめっ面。
九音は何かあるとすぐに噛み付かれると言っていたが、確かにかなり彼女の事を嫌っているらしい。
澪の話を聞いている間もずっと、苦虫を噛み潰したような顔で素麺を啜っていた。
「あんたこそ、九音ちゃんのこと嫌いなくせに、そういうとこはキッチリしてるわねー」
「けじめよ。母さんは、そういうのをないがしろにし過ぎ」
まずい―――二人の間の空気を敏感に読み取った澪は、息を呑む。
「あんふぁは、ふぉまふぁふひよー」
口に含んだまま喋ったせいで、雛子の顔に素麺の滓が張り付いた。
刹那。
ピシッ…などと空気にヒビが入るような音が響く。
錯覚かと思いきや、それは雛子が箸をへし折った音だった。
よく冷えた素麺を汁に浸しながら、澪は茜達に昼間の事を語っていた。
あの後、山の麓で九音と分かれるとすぐに雨が降り出したので急いで戻って来たのだ。
そのせいで雀の涙の体力も完全干上がってしまい、ついさっきまでぐっすりと夢の国を彷徨っていた。
「あははは、そぉー。九音ちゃんに会ったのねぇ。我が儘な娘だったでしょー?」
どこかに行っていたという茜は、くたびれたYシャツ姿で大笑いしながら、素麺を大量に腹の底へと流し込んでいる。
「母さん!ご当主をちゃん付けなんて、人に聞かれたら何て言われるか…」
そんな母親に反して、隣りの雛子は、ずっとしかめっ面。
九音は何かあるとすぐに噛み付かれると言っていたが、確かにかなり彼女の事を嫌っているらしい。
澪の話を聞いている間もずっと、苦虫を噛み潰したような顔で素麺を啜っていた。
「あんたこそ、九音ちゃんのこと嫌いなくせに、そういうとこはキッチリしてるわねー」
「けじめよ。母さんは、そういうのをないがしろにし過ぎ」
まずい―――二人の間の空気を敏感に読み取った澪は、息を呑む。
「あんふぁは、ふぉまふぁふひよー」
口に含んだまま喋ったせいで、雛子の顔に素麺の滓が張り付いた。
刹那。
ピシッ…などと空気にヒビが入るような音が響く。
錯覚かと思いきや、それは雛子が箸をへし折った音だった。