呪イノ少女、鬼ノ少女
「雛ちゃん、甘いもの食べた?」

「ん?食べてませんよ」


そう言って、雛子はスンスンと腕やら指先に鼻を近付けた。

が、そんな匂いはしないらしく首を傾げる。


「しませんよ?」

「おかしいな」


頭の芯の溶かしてしまうような、甘ったるい匂いがしたのは間違いないはずだ。

試しに嗅いで見た雛子の髪は確かにいい香りはしたが、もう甘い匂いはしなくなっていた。


「変な、澪さん。それより体の匂いなんて嗅がないでよ。恥ずかしいです」

「ごめん、ごめん。気のせいだったみたい!でも雛ちゃん、いい匂いがするよ?」


いきなり体臭を嗅がれるなんて非礼を犯された雛子は頬を膨らませてしまい、澪は慌ててフォローにならないフォローを入れる。


「もう!澪さんの馬鹿。罰として、お昼ご飯の準備手伝ってもらいますからね」

「は、はーい」


プリプリ怒ってしまった雛子に、ぺこぺこと頭を下げながら澪は部屋を後にした。

結局、匂いの正体は分からず仕舞いだったが、後々これがどういう意味を持ってくるのかは、澪も雛子も知らないのだった。



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