呪イノ少女、鬼ノ少女
「私の屋敷に決まってるじゃない」


さも、当然の様に。

何を馬鹿な事を、と九音は答えた。


「駄目です!!」


とそれに対して、何故か澪ではなく雛子が声を上げた。


「誰が好き好んで、お客様を虎の巣に放り込むものですか!」


澪は虎の巣は言い過ぎだと思った。

それではまるで、澪が食べられてしまうようではないか。


「あなたに関係ないでしょう。全く…相も変わらず鬱陶しいわね」

「ごめんなさいね、九音ちゃん。鬱陶しい娘で」

「鬱陶しくない!!もう!母さんはどっちの味方よ!ていうか、ちゃんとご当主って呼んでよね!」


性格が破綻した二人を相手に雛子は酷く劣勢。

一気に捲し立てたせいで、かなり息が上がっている。

無視すればいいだろうに、それを出来ないのが雛子の性格なのだろう。


「お前に構っていると日が沈んでしまうから、もう行くわね」


と、いい加減業を煮やした九音は澪の手を引いて表に出る。

ギャーギャーと雛子は喚いていたが、どうやら茜に押さえ付けられてしまっているようだった。


「…結局、私の意思は最後まで無視ですか…」


自分の意見を伝えられない…実に日本人らしい澪であった。



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