呪イノ少女、鬼ノ少女
火群村の外れ、この辺りで一番高い山の麓。


そこの林の中に、戦砦のような重厚な造りの珠祭の屋敷が突如現れた。


武家屋敷のような厳めしい門もちゃんとあれば、何に使うのやら物見櫓まである。


「わぁ…」


時代錯誤も甚だしい屋敷の様相に、圧倒された澪は満足に驚きを現すことも出来ないでいる。


少し前に立つ九音は、そんな澪の様子にクスリと笑みを零し、「おいで」と手招いた。


「無駄に大きくってね。他に誰もいないから、掃除は大変だし、使っていない部屋ばかりなのよ」

「こんな所に一人…ですか?」


屋敷と九音を何度も見比べて問うた。


「ええ。お母様は随分昔に亡くなったし、お祖父様も三年前に逝ったから」


九音の話を聞きながら、澪は大きな門ではなく、その脇の小さな扉を身を屈めて通った。


「お父さんは?」

「無論、いないわ」


何処か素っ気無い口調だ。

父の事は話したくないのだろうか?


「その…亡くなられたんですか?」

「…そうよ」


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