呪イノ少女、鬼ノ少女
父の葬儀は、寂しいものだった。

参列したのは近所の住人と会社の同僚がほんの数人。

それが全てだった。

交遊関係を殆ど持たない父だったが、いかに寂しい人だったのか窺いしれた。


体が弱かったという母は、澪を産んで数年後になくなっていたし、親類縁者たちとは会ったこともないくらい疎遠であった。


葬儀が終わった後、澪は遺影の前で糸の切れたような人形のように座ったまま、うわ言のように父を呼び続けていた。


九曜茜がやってきたのは、そんな日が数日続いた頃だった。

突然やって来たかと思うと、断りもなしに、しかも靴も脱がずに上がりこむのだから、澪が驚いたのは言うまでもない。

澪を押しのけた茜は彼の遺影の前に立つと、何を言うでもなく、ただ静かに泣いていた。

小刻みに震える肩が、彼女の抑え付けている悲しみの深さを物語っていた。


その時は彼女が何者か知るはずもなかったが、突然の侵入者が父の為に涙を流してくれたことがただ嬉しかった。

隠れるように孤独に生きていた父にも泣いてくれる人が居る。

それだけで、父の生に価値はあったのだと思えた。



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