呪イノ少女、鬼ノ少女
澪がその地獄から解放されたのはそれから半刻ほどしてからだった。

顔面蒼白で、足元も覚束ない。

茜に支えて貰いながら、何とか九曜家の玄関にたどり着くと、そのままへなへなと座り込んでしまった。

奥からはカレーを煮込むスパイシーな香り漂って来たが、今はそれも吐き気を催させるだけで、気持ちが悪い。

と、そこへ奥からトテトテと走ってくる音が一つ。


「おかえり、って澪さん!?」


奥から走ってきた少女が素っ頓狂な声を上げた。

茜の娘の九曜雛子である。

茜とは似ても似つかないしっかりとした女の子で、今は花も恥らう中学三年生。

母親とは違って、きりっとした凛々しい顔立ちである。


「母さん、あれだけ運転に気をつけろって!」

「いやぁ十分気をつけたはずなんだけど」


嘘だ、と突っ込みを入れたい澪だったがとてもそんな力は湧いてこなかった。

雛子はお玉を振り回して茜を家から追い出すと、澪に肩を貸して今まで案内した。


「ごめんね、澪さん。大変だったでしょ」

「う、うん。まさかあんなにスリリングな運転だなんて思わなかった…」


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