もうこれ以上、許さない
揺らぎそうになる心を、これでもかってくらい釘打ちする。

「…焦んなくていいよ。
菊川さんの気持ちには、答えられないって言ったじゃん」

「…うんでも、俺も諦めないって言ったじゃん」

もうこれ以上そんな事言わないでよっ…
その強い目と気持ちに、心が引っ張られてしまう。

すぐに他のお客様がきて、この話が打ち切られればいいのに…
そんな時に限って誰も来てくれない。


「ごめん、そんな辛そうな顔させて…
月奈ちゃんを苦しめたくはなかったのに」

こっちのセリフだよ。
あたしだって風人をこれ以上苦しめるわけにはいかないから、こうするしかないんじゃん。


「だけどさ。
好きで好きでたまんない気持ちは、どうにもなんなくて…
だからこれだけ許してほしい」
言い終えるや否や。

ぐっと後頭部が引き寄せられて、ゴシゴシとおでこが何かで拭かれた。

「ちょっ、やめてよっ」

「だいじょぶ、まだ使ってないハンカチだから」

「そーゆう問題じゃな、」
逃げ腰に(うつむ)けてた顔を、バッと上げると。

至近距離で目が合って、胸が大きく弾ける。


お互い目を大きくして固まる最中(さなか)
心臓が、風人に聞こえるんじゃないかってくらい騒ぎ出す。
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