もうこれ以上、許さない
「…上書きしてい?」
その目が艶っぽく変化して、甘く切なげな声が落とされる。

「いいわけ、ないじゃん」
なのに心が、身体が、それを求めて動けなくなっていた。

「ん…
…でも逃げないからする」

うそ、どーしよう!

「ああっ、お客様!」
すんでのところで、そう吐き出すと。

近づいてた顔が、ビクッと出入り口に向けられた。

「っ…
誰もいないじゃん!」

「逆にいたらどーすんのよ!」

「うっ、ごめん…
でも店じゃなかったらいいって事か」

「よくない!最っ低!も帰って!」

さすがに悪いと思ったのか、すんなり落ち込みながら帰っていった風人。


だけど、今のはあたしも悪かった…
あれじゃしてって言ってるようなもんじゃん!

ダメだ、しっかりしなきゃ。
もう絶対求めない。
2度と風人を苦しめない!

そう言い聞かせながらも、心臓はまだ騒いでて…

ああも!こーなったらまた誉に頼るしかないっ。
さっきその人に騒いだ胸を、もう一度取り戻したいと思った。

すぐにLINEして、ダメ元で誉もCyclamenに誘うと…
めちゃくちゃ喜ぶセリフとともに、少し遅くなるけど待っててほしいと返信される。

ごめんね、誉…
忙しいのにありがとう。


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