もうこれ以上、許さない
風人は、あたしじゃなくて玉城さんを…
抱きしめるように守ってた。


「大丈夫か芽衣!?」

「…うん、ありがとう。
風人が守ってくれたから、私は大丈夫」

そのやり取りに胸が潰される。


「よかったぁ〜。
月奈は大丈夫かっ?」
今さら心配して、風人がこっちに来ようとすると。

「きゃあっ」
引き止めるようにして、しがみつく玉城さん。

「どした芽衣っ?」

「びっくりして、腰抜かしちゃったみたい…
どうしよう、立てないっ…」

「よーしじゃあおんぶするから、そのまま背中に体重かけてっ?」

そして玉城さんは、背負われるなり。
「怖かった…!」
そう言いながら、頬が触れ合うほどぎゅうっと風人に抱き付いた。

その瞬間、プツリと。
あたしの中で何かが切れる音がした。


「…離れて」
思わず呟くと。

こっちを向いた玉城さんは…
「ごめんね?樋口さん。
風人の事、ちょっと借りるね?」
甘えた声で、困ったような笑顔を浮かべた。

あたしにはそれが、憐むような、どこか勝ち誇ったような笑顔に見えて…
怒りがいっそう煽られる。


「だめ!離れてっ。
おんぶならあたしがするから、とにかく下りてっ」
無理やり引き離そうとすると。
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