夢の中で私を呼んでいるのはあなたですか?
第9話 婚約―残された時間は少ない!
あの夢は一度きりで、同じ夢はその後も見なかったし、見たくもなかった。週末の3月28日(土)に金沢へ急遽帰省した。新幹線が3月14日に開通したので、乗り換えなしになり所要時間も2時間半になって、帰省が随分楽になった。
新高岡駅を通過してしばらくすると石川県と富山県の県境の倶利伽羅峠に差し掛かる。今はトンネルで通過するが昔は交通の要所で軍事的にも要所であったようだ。源平の戦いで木曽義仲が平氏の大軍を破った有名な古戦場がこのあたりだ。
帰省のたびにここを通過するが、どういう訳かいつもなつかしい気持ちがする。母方の田舎がこのあたりと聞いていたので、そのためかもしれない。ここまでくると故郷に帰ってきたと実感できる。
実家では両親に事の成り行きを話した。もし話が進んだら、婚約・結婚することになっても良いとの了解を得た。午後6時に山本家を訪問して夕食をすることになっている。
家庭教師のころのように徒歩で山本家を訪問した。家の造りは6年前とほとんど変わっていない。母親と猫が家の前まで迎えに出ていた。僕を見つけると笑顔で挨拶をくれる。猫が足元にまとわりついて来る。
玄関を入るとすぐに、紗耶香が部屋で待っているので行ってやってほしいと言う。2階へ上がる。以前と同じ紗耶香ちゃんの部屋があった。
ドアをノックすると「どうぞ」の声がする。「こんばんは」と言って部屋に入る。部屋の雰囲気は変わっていないが、女子大生の部屋になっている。紗耶香ちゃんが以前のように勉強机の前で椅子に腰かけてこちらを向いている。
「紗耶香ちゃん、すっかり元気になったね」
「先生、とっても会いたかった。あれからゆっくりお会いする機会がなくて」
「病院以来だね。退院してから、マンションで療養して、すぐに大学に行っていたからね。試験はどうだった?」
「なんとか留年は免れました。友人からノートを借りて、試験には間に合いましたから」
「それならよかった。でも無理しないで」
「もう大丈夫です」
「お父さんからいろいろ聞いた。僕は紗耶香ちゃんとは不思議なご縁を感じている。こうしなければならないと思うようになってきている」
「私も夢の中のことと現実が交錯して、先生とのご縁を感じています」
「お父さんは紗耶香ちゃんも望んでいると言っていたけど、今日は本人に確かめたくて、プロポーズに来ました。あの時の約束のとおり、僕のお嫁さんになってくれますか?」
「嬉しい、プロポーズをお受けします。ありがとうございます」
言うのと同時に、紗耶香ちゃんが抱きついてくる。彼女を抱き締める。なんて華奢な身体なんだ、力をいれると折れそうだ。それにいい匂い。そっと額に口づける。紗耶香ちゃんが抱きついて離れようとしない。
これ以上、二人きりでこのまま部屋にいるのはまずいと思い、ご両親に挨拶に行こうといって、階下へ降りて行く。
紗耶香ちゃんの両親に、娘さんをお嫁に下さいと挨拶した。両親はとても喜んでくれた。
それから4人で食事を始めた。食事の時に、紗耶香ちゃんが両親に中学3年の時にした結婚の約束の話をした。両親は目を丸くして聞いていたが「二人は運命の赤い糸で結ばれている」と言って、感慨深げであった。
両親にはその席で、一人娘の紗耶香さんをお嫁に貰ってもいいのかを確認した。両親は娘が幸せになるのが一番なのでよろしくお願いしますときっぱりと言った。僕たちは婚約した。
次の日に、紗耶香ちゃんを実家の両親に紹介した。両親は一目見ると、彼女を気に入ってくれて、婚約を喜んでくれた。それから4人でお茶を飲みながら交通事故や家庭教師の話をした。
その後、紗耶香ちゃんを自宅まで送り、その足で駅から東京へ向かった。新幹線の中で、紗耶香ちゃんを抱きしめた時の、華奢な身体の感触を思い出して幸せな気分に浸った。婚約してよかった。
紗耶香ちゃんの両親は20歳のうちに結婚させたいので、すぐにでも式を上げ入籍して一緒に住むことを望んだ。
でも何も知らない紗耶香ちゃんは婚約して満足したようで、式は卒業してからでいいと言った。
それで結婚式は紗耶香ちゃんの大学卒業後ということになった。だからしばらくは今のままでよいということだ。
紗耶香ちゃんの誕生日は9月23日で21歳までに半年しかない。紗耶香ちゃんは両親から結婚を急ぐ理由となっている21歳の件は知らされていない。
それまでに結婚させて幸せな生活を始めさせたいとの親心が分かっているだけに、どうしたものか心配だった。
新高岡駅を通過してしばらくすると石川県と富山県の県境の倶利伽羅峠に差し掛かる。今はトンネルで通過するが昔は交通の要所で軍事的にも要所であったようだ。源平の戦いで木曽義仲が平氏の大軍を破った有名な古戦場がこのあたりだ。
帰省のたびにここを通過するが、どういう訳かいつもなつかしい気持ちがする。母方の田舎がこのあたりと聞いていたので、そのためかもしれない。ここまでくると故郷に帰ってきたと実感できる。
実家では両親に事の成り行きを話した。もし話が進んだら、婚約・結婚することになっても良いとの了解を得た。午後6時に山本家を訪問して夕食をすることになっている。
家庭教師のころのように徒歩で山本家を訪問した。家の造りは6年前とほとんど変わっていない。母親と猫が家の前まで迎えに出ていた。僕を見つけると笑顔で挨拶をくれる。猫が足元にまとわりついて来る。
玄関を入るとすぐに、紗耶香が部屋で待っているので行ってやってほしいと言う。2階へ上がる。以前と同じ紗耶香ちゃんの部屋があった。
ドアをノックすると「どうぞ」の声がする。「こんばんは」と言って部屋に入る。部屋の雰囲気は変わっていないが、女子大生の部屋になっている。紗耶香ちゃんが以前のように勉強机の前で椅子に腰かけてこちらを向いている。
「紗耶香ちゃん、すっかり元気になったね」
「先生、とっても会いたかった。あれからゆっくりお会いする機会がなくて」
「病院以来だね。退院してから、マンションで療養して、すぐに大学に行っていたからね。試験はどうだった?」
「なんとか留年は免れました。友人からノートを借りて、試験には間に合いましたから」
「それならよかった。でも無理しないで」
「もう大丈夫です」
「お父さんからいろいろ聞いた。僕は紗耶香ちゃんとは不思議なご縁を感じている。こうしなければならないと思うようになってきている」
「私も夢の中のことと現実が交錯して、先生とのご縁を感じています」
「お父さんは紗耶香ちゃんも望んでいると言っていたけど、今日は本人に確かめたくて、プロポーズに来ました。あの時の約束のとおり、僕のお嫁さんになってくれますか?」
「嬉しい、プロポーズをお受けします。ありがとうございます」
言うのと同時に、紗耶香ちゃんが抱きついてくる。彼女を抱き締める。なんて華奢な身体なんだ、力をいれると折れそうだ。それにいい匂い。そっと額に口づける。紗耶香ちゃんが抱きついて離れようとしない。
これ以上、二人きりでこのまま部屋にいるのはまずいと思い、ご両親に挨拶に行こうといって、階下へ降りて行く。
紗耶香ちゃんの両親に、娘さんをお嫁に下さいと挨拶した。両親はとても喜んでくれた。
それから4人で食事を始めた。食事の時に、紗耶香ちゃんが両親に中学3年の時にした結婚の約束の話をした。両親は目を丸くして聞いていたが「二人は運命の赤い糸で結ばれている」と言って、感慨深げであった。
両親にはその席で、一人娘の紗耶香さんをお嫁に貰ってもいいのかを確認した。両親は娘が幸せになるのが一番なのでよろしくお願いしますときっぱりと言った。僕たちは婚約した。
次の日に、紗耶香ちゃんを実家の両親に紹介した。両親は一目見ると、彼女を気に入ってくれて、婚約を喜んでくれた。それから4人でお茶を飲みながら交通事故や家庭教師の話をした。
その後、紗耶香ちゃんを自宅まで送り、その足で駅から東京へ向かった。新幹線の中で、紗耶香ちゃんを抱きしめた時の、華奢な身体の感触を思い出して幸せな気分に浸った。婚約してよかった。
紗耶香ちゃんの両親は20歳のうちに結婚させたいので、すぐにでも式を上げ入籍して一緒に住むことを望んだ。
でも何も知らない紗耶香ちゃんは婚約して満足したようで、式は卒業してからでいいと言った。
それで結婚式は紗耶香ちゃんの大学卒業後ということになった。だからしばらくは今のままでよいということだ。
紗耶香ちゃんの誕生日は9月23日で21歳までに半年しかない。紗耶香ちゃんは両親から結婚を急ぐ理由となっている21歳の件は知らされていない。
それまでに結婚させて幸せな生活を始めさせたいとの親心が分かっているだけに、どうしたものか心配だった。