雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「まあ」

 まだ日が昇る前の暗い空は、それでも雲で覆われていることがわかった。

「さすが巫女様、と宮中でも評判のようです」

「でも、まだ雨は降っていないのね」

「ええ。でもこれだけ曇っているのですもの、きっとすぐに雨がきますわ」

「そう……」

 嬉しそうな秋華と反対に、璃鈴の表情は晴れない。



「璃鈴様?」

「ん……なんでもないわ。急いで食事を終わらせて仕度しないと」

「はい」

 結局その日は、曇っただけで雨が降ることはなかった。



  ☆
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