雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「ここにたくさんの妃が集まれば、里にいた時のようにまたみんなで楽しく日々を過ごせるかと思っていたの」

 妃のいない後宮は、閑散として寂しかった。女官たちはたくさんいたが、皇后とは立場が違うので、対等に話をすることはできない。だから璃鈴は単純に、ここに妃がいれば、またあの日々が過ごせると思っていたのだ。

 少し寂しそうな璃鈴を見て、秋華は複雑な気分になる。


「璃鈴様。ここは後宮です」

「そうね」

「皇后様の巫女としての職務はともかく、後宮にいらっしゃる妃にとっての一番大切な役割はご存知ですよね?」

「もちろんよ。皇帝の御子を産んで、次代の皇帝を……」

 言いかけて、ふ、と璃々は気づいた。

(そうだ。後宮の妃の役割は……)
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