雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「俺が、他の妃に触れるのは嫌だったか?」

 璃鈴は、龍宗と言い争った時の胸の痛みを思い出してもの憂げに目を伏せる。

「はい。なぜでしょう。その場面を想像しただけで胸が痛みます」

「それは、嫉妬、だ」

 耳慣れない言葉に、璃鈴は顔をあげた。



「嫉妬……?」

「俺を他の妃に渡したくないと思う感情。それが、嫉妬だ」

 確かに言われてみれば、それが苦しい胸の原因だ。しかしそんな気持ちは、後宮の妃としては持ってはいけない感情だという事も璃鈴はわかっている。

 璃鈴は、すがるように龍宗の袖をつかんだ。
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