雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 無言で自分を見つめる龍宗に気をよくした玉祥は、正面に座っていた明貴に声をかけた。

「孟徳妃は、舞の名手でございますのよ。明貴、どうです? 陛下のために一指し舞って差し上げては」

「まあ、玉祥様。わたくしの舞など、雨の巫女である皇后様に叶うものでは」

「雨を呼ぶなどと言われますが、そんな陰気な舞よりもずっと明貴の舞の方が華やかで美しいわ」

 璃鈴を小馬鹿にしたような物言いに、龍宗は気色ばむ。だが、隣に座っている玉祥も正面にいた明貴も舞の話に夢中で、龍宗が気を悪くしたことに気づいていなかった。


「では、朱賢妃の琵琶があれば」

 明貴が顔を向けると、素香が黙ってうなずいた。元来、無口な質らしい。すぐに侍女が、調節済みの琵琶を素香に渡す。
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