雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 ちょうど卓から見やすい位置には、舞うのにちょうどいい場所が開いている。舞の件も、思いついて口にしたわけではなく、おそらく最初から仕組んであったものだろう。

 椅子を持ってくると、素香はぽろんと琵琶を奏で始めた。それに合わせて、扇子を持った明貴が舞い始める。


 最初は斜にかまえて見るともなしに見ていた龍宗だが、その見事な舞と音色についつい顔をあげていた。

 さすがに、後宮の四妃に選ばれるだけの女性達だ。官吏のつながりが強いというだけではなく、一人一人が十分に皇帝の妃としてその役割を果たせるだけの能力を持っていた。いや、むしろそのためにあらゆる教育を受けて育てられたのだろうと、龍宗は気づく。


 一通りの舞が終わると、龍宗は素直に感嘆の言葉を口にした。

「流麗だな」

「恐れ入ります」
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