雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 朝議の度に官吏ともめ事を起こす龍宗に、飛燕は毎度苦労をさせられる。

 その龍宗が、古の盟約とはいえ、皇后に世間知らずの巫女を迎えなければならない。

 正妃として龍宗を支えることができることが璃鈴にできるのか。飛燕は、それを確かめたかった。

「そうなんですね。……飛燕様」

「はい」

「これが、これからの私が陛下と共に背負うものなのですね」

 そう言って街に視線を移した璃鈴の表情を見て、飛燕はわずかに目を瞠った。

 璃鈴の目には、ただの同情だけではない凛とした決意とでもいうべき感情が浮かんでいた。

 これから皇后となる自分の背負うものを、璃鈴は正確に把握したのだ。その表情を見て飛燕は、危険を冒して彼女を連れ出したことの目的が達成されたことを知る。
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