雨の巫女は龍王の初恋に舞う
第七章 毒と陰謀
 もうすぐ夕餉の刻という頃に、下女の娘が秋華を呼びに来た。


「恐れ入ります。冬梅様が秋華様をお呼びです」

「冬梅様が?」

 璃鈴は秋華と顔を見合わせる。先日、そうやって呼び出された折に、妃嬪が後宮入りしたのだ。冬梅が悪いわけではないことはわかっているのだが、その彼女から呼び出しとなるとなにやら身構えてしまう。

「何でしょう」

「さあ。ちょっと行ってまいります」

「ええ」

 軽く会釈をすると、秋華は下女と部屋を出て行った。


 しばらくすると、またほとほとと誰かが戸を叩く音がする。

「はい。あら」

 璃鈴が開けてみると、今度は璃鈴も見知った世話係の女官だった。名を夏花という、明るくてくるくるとよく働く娘だ。

「あの、これを、秋華様が……」

 うつむいて差し出されたのは、お茶の缶だった。
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