雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「どうやらそうみたい」

 それを聞いて、一番前にいた英麗が目をむいた。

「なんであんたなのよ! 私の方がずっと皇后として相応しいのに」

「あらどうかしら。三十の年増が来たら、さすがに龍宗様もがっかりするのではなくて?」

 後ろから、瑞華が笑う。



「誰が三十よ! 私はまだ二十四よ!?」

 きいきいとがなりたてる英麗を放っておいて、瑞華が言った。

「皇后って、こんなに急に決まるものなのね。もっと何か審査みたいなのがあるのかと思っていたわ」

「そうよね。ほら、覚えてる? 以前、皇帝がいらっしゃったときにみんなで舞を舞ったこと」

 緑蘭が言って、璃鈴がうなずいた。

「ああいうのが繰り返されるのかと思ったけど、あれきりだったわね」

「まさかあの時に璃鈴が見染められたというの?!」

 皇后になりたかったというより自分が選ばれなかったことで憤慨している英麗は、納得できない様子だ。

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