雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「本当になんで璃鈴なのかしら。どんな美妃が来るかと思いきや、こんな山猿が来たのでは皇帝だってがっかりするでしょうに」

 緑蘭は美しい顔のわりに言葉に容赦がない。


 現在のこの里には、璃鈴を入れて六人の巫女がいた。皇后になるための教育は厳しく行われていたが、それがなければ巫女としての生活に生きるのんびりとした里なのだ。

 後宮に何人妾妃を入れてもいいが、神族からの妃はたった一人と決まっている。現皇帝の妃が決まったのなら、次の皇帝が妃選びを始めるまでこの里は皇后を育てる役目を失い、以前通りただの雨の巫女の里となる。残された巫女たちは、それぞれ年頃になれば神族の男性と結婚し、また新たな巫女たちを育てていくのだ。それが、神族として代々繋がれる宿業だ。
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