雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 飛燕と余揮が話している最中に意識が戻った秋華は、聞くともなしに二人の話を耳にしてしまった。その内容が内容だけに、起きるに起きられず気を失ったふりを続けていたのだ。

「申し訳ありません。それに、あの、私、自分で歩けますので……」

 秋華は言外に降ろしてほしいと告げる。だが飛燕は、秋華を腕に抱いたまま離そうとしない。

「このまま医務室までお連れします。あなたには、休息が必要だ。これからのためにも」

 その言葉の意味を瞬時に察して、秋華は息を飲む。そして戸惑ったように、飛燕と余揮の顔を見比べた。

「飛燕様は、一体どういう……」

 飛燕は、いつもの笑みを浮かべて言った。

「お聞きになりましたね。私は、陛下の実の弟です」

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