雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「毒……? あなたは……」

 璃鈴の問いに答えることなく、急速にその女性は遠ざかっていく。もしかしたら遠ざかっているのは璃鈴の方かもしれないが、よくわからなかった。

 ただその女性の声だけが、途切れ途切れに届く。

「……あの子を……どうか…………お願い……」

「待って! あの子、って……!」

 璃鈴は必死に、その光に向かって手を伸ばした。


  ☆


「……璃鈴!」

 伸ばした手を、誰かが掴んだ。温かい手だった。気がつくと、あたりが明るくなっている。

「璃鈴」

 ぼやけた視界がもどかしくて何度か瞬きすると、次第に視野が鮮明になってくる。

 目の前には、心配そうな龍宗の顔があった。
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