雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「一緒に行くのは、秋華ですって?」

 花梨が璃鈴に聞いた。

「ええ。よかったわ、都に行くのが一人ではなくて。秋華が一緒なら、私も心強いもの」

 璃鈴が笑って言うと、なぜか巫女たちは沈黙した。そしてお互いに目配せをしあう。

「まあ、璃鈴がいいならいいけど……」

 歯切れ悪く言った花梨を、璃鈴は不思議そうに見上げた。花梨は何か言いかけて口を閉じ、それから微笑んだ。


「おめでとう、璃鈴。あなたならきっと、いい皇后になれるわ」

「花梨……」

「これ、よかったら持っていって。私からのはなむけ」

 そう言って花梨は、きれいに刺繍した手巾を璃鈴に渡した。

「まあ。ありがとう」
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