雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「気づいていたのか」

 龍宗の声は、重かった。

「はい」

 食事はもちろんのこと、璃鈴の入れた茶の一杯すらも、龍宗が一口とて飲んだことはなかった。そう気づいたのは、つい最近だ。



「ずっと、毒を心配していたのですね」

 龍宗は、居心地悪そうに目をそらした。

「お前を疑っていたわけではない。もうくせのようなものだ。幼い頃にここで毒を盛られそうになってから……そして母がその毒の後遺症で亡くなってから、自室以外の後宮では、食事をすることも眠ることもできなかった」

「眠る、ことも?」

 初耳だった璃鈴は、目を丸くする。
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