雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「ああ。お前がくるまで、ここは俺にとって安心できる場所ではなかったのだ」

 だから、結婚した当初は、璃鈴が隣にいても眠ることはできなかった。璃鈴だけではなく、この後宮にいるすべての者を、龍宗は信じられなかったのだ。


「今は、ちゃんと眠れる。……眠れて、いるんだ」

 龍宗は、ふ、と表情を和らげた。

「信じよう。これからは、何があっても、お前を。だから、もうこんな肝を冷やすような真似はしてくれるな」

「はい」

 璃鈴も、ようやく笑みを浮かべた。


「龍宗様のために、とびきり美味しいお茶を入れます。だから今度は、私と一緒に飲んでくださいましね」
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