雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「秋華は、私に毒を盛るなんて、そんなこと絶対にしません」

「ああ。わかっている」

 なだめるように言った龍宗に、璃鈴は首を振る。


「わかっているのに、どうして追放なんて……私の意識があったら、秋華を助けられたかもしれないのに……なんで、三日も……」

「お前だって、生死の境をさまよっていたのだ。人のことまで心配している場合ではなかっただろう」

「そんなの、秋華の辛さに比べれば!」

 叫んだ璃鈴に、龍宗は眉をあげた。


「きっと秋華のことだから、毒なんて受け取ったのは私を守るためです。どうしてそうなったかはわかりませんが、自分が罪になることが分かっていても、きっと私を守ろうとしてくれたはずです」

 龍宗は璃鈴の手を握りしめながら、おだやかに笑んだ。
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