雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「本当は今夜渡すはずだったのよ? 皇后への贈り物にしては粗末かもしれないけれど……私の作った中では、いっとういいものだからね」

「嬉しいわ、花梨。ずっとずっと、大切にする」

「私は、これ」

 緑蘭は、淡い色の半襟を差し出す。それは、大人用の襟だった。



「今日から使えるようにがんばって間に合わせたの。皇后になっても使えるから、よかったら使ってね」

「大人の色……憧れていたの。嬉しい。ありがとう」

 明日からは、この色の襟をつけた衣でみんなと舞うはずだった。そうなることに憧れていた。

 そう思うと、急に璃鈴の胸に実感がわいてくる。
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