雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 足元が濡れるのにも構わずに駆け寄るその侍女を見て、璃鈴はぽかんと口をあける。

「よかった。気が付かれたのですね? ご気分はいかがですか? ずっと、ずっと眠り続けで、本当に心配致しました」

 そう言って、涙を浮かべる女性は。


「秋華……?」

 秋華は後宮追放になったと今聞いたばかりだ。呆然とする璃鈴に、龍宗が言った。


「紹介しよう。秋華の代わりに新しく入った春玲だ」

「春……玲?」

 は、と気づいたように秋華……春玲は璃鈴の寝台の横に膝をついて礼をとる。
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