雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「つい、皇后様の御無事な姿を見て取り乱してしまいました。お見苦しい姿をお見せしてしまったことをお詫びいたします。改めまして、このたびこちらの配属になりました、春玲と申します。以前にいた侍女の代わりに、皇后様のお世話をいたします」

「春玲は、冬梅の娘だそうだ。なかなかしっかり者だぞ」

 にやりと龍宗が笑う。璃鈴の頭がついていかない。

「秋華……は……」

 春玲が、目に涙を浮かべて璃鈴を見つめる。

「その女性は、罪を背負って後宮を追放になり、いずこへか姿を消しました」

「皇后を毒殺しようとした秋華という侍女はもういない。あとはこの春玲に面倒をみてもらえ」

 璃鈴の目にまた新たな涙が浮かんで、春玲の姿がぼやける。
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