雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 その夜。

「そういえば、龍宗様」

「なんだ」 

 相変わらず同じ寝台にありながら、龍宗は璃鈴にただ寄り添って眠る日々を過ごしていた。

 今までと違うのは、龍宗が璃鈴の隣で深く眠るようになったこと、そして、目覚めれば共に朝餉を取るようになったことだ。


「龍宗様のついた嘘って、なんですか?」

 屋根にあたる雨の音に耳を澄ませていた龍宗は、薄闇の中で璃鈴に目を向ける。

「以前、一つだけ私に嘘をついたと、龍宗様がおっしゃったことを思い出して」

「ああ……」

 龍宗は、ごろりと璃鈴の方を向いて頬杖をつく。

「知りたいか?」

「はい」

 しばらく考えてから、龍宗は、片手で璃鈴の頬に触れた。

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