雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 都へ行くこと。今日で、みんなと別れることが。

 つきん、と璃鈴の胸が痛んだ。


「邪魔じゃなかったら持っていきなさいよ」

 そう言って英麗が渡したのは、玻璃と瑠璃を組み合わせた簪だった。璃鈴は驚いて顔をあげる。

「これ、英麗の一番気に入っていたものじゃ……」

「だからよ。皇后となる女が、みすぼらしい装飾品じゃ、里の名が落ちるわ。せいぜい美しく装いなさい」

「じゃあ、これも。私が皇后になる時にさす予定だったんだけど、あんたでもいいわ」

 瑞華は、璃鈴の帯に銀の留め具をさしながら、璃鈴を抱きしめた。

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