雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「あの時のお前は、まだ皇后になることが可能な十六歳には達していなかった。だからお前が十六になる日を、俺はずっと待ち続けていた」

「龍宗様……」

 龍宗は緩やかに顔を近づけると、璃鈴に口づける。すっかりその行為に慣れた璃鈴は、唇が離れると、ほう、と息をついた。



「今宵、お前を抱く」

 璃鈴が仰ぎ見る龍宗の瞳は、いつも口づけを求めてくる時と同じ熱をはらんでいた。璃鈴は、その顔を見かえす。

「抱く、とは」

 わざわざそう宣言するという事は、いつものように抱きしめることとは何かが違うのだろうか。

 戸惑う璃鈴に、ふ、と龍宗は笑った。

「俺と、一つになるということだ」

「龍宗様と?」

 そう言われても璃鈴にとってはまだ理解できない状況だったが、わからないなりに何か素晴らしく幸せなことに思えた。

 急に璃鈴の胸がどきどきと高鳴ってくる。

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