雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 だがそれには、二人が心と体、その両方を通わせ一つとなることが必要となる。歴代の皇帝の中には、体を合わせることができても心を合わせられなかった皇帝と妃ももちろんいた。そういう朝はたいてい短命に終わる。災害が多く、国の内部が乱れるためだ。

 流れる雨を受けながら、ぴたりと寄り添って優雅に舞う二人の姿を見る者は、天以外には誰もいない。





「始まりましたね」

 神楽からほど遠い屋根の下で、凜と胸を張って幕を見つめながら春玲がつぶやく。隣に同じように立っていた飛燕は、ちらりと春玲を見下ろした。

 あたりに人影はなく、雨の音だけが二人を包んでいる。

「そうですね」

「これで、雨が落ち着くと良いのですけれど」
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