雨の巫女は龍王の初恋に舞う
(璃鈴様も、陛下と舞った時はとても楽しかったとおっしゃっていた。きっと、こんな感じだったのね)

「ただし、これは決して人に見せてはならない秘伝の舞です」

 飛燕は、重々しく言ってから春玲の耳元にささやいた。

「ですから、一緒に舞うには、誰もいない二人きりのところで……ですよ? いろいろと、覚悟しておいてよね」

 一瞬きょとんとした春玲がじわじわと顔を赤く染めていくのを、飛燕は笑いながら見つめていた。





 璃鈴と龍宗が舞っていると、次第に雨が弱くなってきた。なおも舞を続けていると、幕の向こうから久しぶりの朝日がさしてくる。

 雨が上がったのだ。

 舞を終わらせて向かい合って見つめあった璃鈴に、龍宗は触れるだけの口づけを落とした。
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