雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「神族の巫女は、自分の身の内に龍が持っていた雨を司る力を封じた。そして龍の持つ日の力と、巫女のもつ水の力が互いに相殺する形で、力の均衡を保つことができるようになったのだそうだ。だから、どちらの力に傾向けば、大地は乱れる。二人が心を通わせることこそ、天の安定を保つために重要なのだそうだ」

「ただの神話ではなかったのですね」

 自身が雨を呼ぶ力がある事を知っていても、龍宗の話はすぐには信じられないものだった。

「代々そう伝えられるが、本当のところは誰も知らぬ」

 そんな璃鈴に視線を移して、龍宗は笑んだ。

「俺も初めて聞いた時は半信半疑だったが……今日初めて、その意味を理解した気がする」
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