雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「私たちの中で一番小さかったあなたが皇后になるのね。この里を出てしまったら、もうここへ帰ってくることはできないけれど……私たちはいつでも、ここであなたのために祈っているわ。堂々と胸を張って、皇后として、そして雨の巫女としての務めを果たしなさい」

「……うん。ありがとう」

「せっかく皇后に選ばれたのに、湿っぽくなるのはおよしなさいな。あんたは私ほど美しくないのだから、いつでも笑っていなければだめよ」


 ぐしぐしと泣き始めた璃鈴の髪を、言葉とはうらはらな優しい手つきで英麗がそっとなでる。

「じゃあね、璃鈴。いってらっしゃい」

 そう言った緑蘭の言葉に、璃鈴がただいまの声を返すことは決してない。けれどその気持ちが嬉しくて、璃鈴は涙をふくと笑って言った。

「うん。いってきます」



  ☆
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