雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「龍の末裔とはいえ、特段、変身するわけでもないがな」

 そう言って龍宗は自分の手を見つめる。その体は、普通の人間と何ら変わらない。璃鈴は、ふふ、と笑った。

「陛下の激しい気性は、暴れる龍に由来するものなのかもしれませんよ?」

「かもしれん。だから、俺を制御するのはお前の役目だ。しかと頼んだぞ」

「はい」

 笑顔で答えた璃鈴だが、龍宗に近寄ろうとして踏み出した足がもつれる。

「きゃっ」

「璃鈴」

 龍宗は手をのばしてその体を支えた。

「すみません」

 舞っている間は平気だったのだが、気が抜けたとたん、急に足元がおぼつかくなった。
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