雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 その日のうちに、璃鈴たちは慌ただしく里を出た。璃鈴の馬車を中心に、騎馬が十数名取り囲むようにして護衛をする。


 里の出口では、長老や他の巫女たちが並んで見送ってくれた。口は悪かったが、みな一緒に暮らした仲間だ。璃鈴も、こんな風に急にこの里を離れることになろうとは想像したこともなかった。

 璃鈴たちを見送ったのは、里のみんなばかりではなかった。


 門を出て細くくねった道をずっと降りていくと、あたりを囲んでいた木々が開けて広い村についた。璃鈴が生まれた場所だ。

 ここは、輝加国の神族の村だ。神族の娘たちは、十前後になると巫女としての適性を判断される。素質があると思われるものは、この村から里へと移される。そこで二十四、五くらいの歳までを巫女として過ごすのだ。巫女の役割を終えると、里に残って次の巫女たちの世話をするか、再びこの村へと戻るかだ。

 その村の周りには大勢の兵士が整列していた。
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