雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 神族の巫女の里は、国の兵士たちにより守られている。幼い頃には何とも思わなかった風景だが、今見るとまた違った印象を与える。璃鈴はあらためて、巫女という存在の大きさを知った。

 村を出る直前、そこに並ぶ人々を見て璃鈴は声をあげた。

「あ!」


 手を取り合ってこちらを見上げているのは、幼い日に別れた璃鈴の父母だ。目を真っ赤にする母を、支えるように父が抱いている。会うのは六年ぶりだが、その顔を忘れることはない。璃鈴は、母の腕に小さな赤ん坊が抱かれているのを見て微笑む。

(私の弟なのかしら、妹かしら。一度だけでも、抱きしめたかったわ)

 そして、その二人の前には、笑顔で手を振る男の子が一人。

(私が家を出る時は、まだ赤ちゃんだったのに……)
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