雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 巫女に選ばれたときは、ここに戻ってくることが当たり前だと思っていた。まだ幼かった璃鈴が家族と離れるのはとても寂しいことだったが、巫女の務めを立派に果たし終えた時には、またみんなに会えると疑いもしなかった。こんな風に会えなくなるとはちらとも思っていなかった。

 馬車は無情にも、止まることなく彼らの前を通り過ぎていく。璃鈴は、万感の思いを込めてちぎれるほどに手を振った。

 隣では、秋華が同じように外に向かって手を振っている。

 その影が豆粒のようになって見えなくなるまで、二人は手を振り続けた。そして、村が遠く見えなくなると、抱き合って泣いた。


   ☆



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