雨の巫女は龍王の初恋に舞う
「ねえ秋華」

「何でございましょう」

「あの……せめて、二人だけの時は、今までのように話してほしいのだけれど……」

 控えめに言った璃鈴に、秋華は一瞬戸惑ったような顔をしたけれど、そのあと、少し悲し気に微笑んだ。

「それは、できませんわ。私と璃鈴様では、もう立場が違ってしまったのですもの。たとえ他人がいようといまいと、きちんと線を引かないと」

「私が、どうしても、と言っても?」

「……それは命令ですか?」



 きっと、普通に話せと璃鈴が命令すれば、秋華は今まで通りの言葉遣いに戻ってくれるだろう。けれどもしそうしてしまったら、璃鈴が本当に望むものは、壊れて、二度と手に入らなくなってしまうに違いない。璃鈴はそれを悟って、ぎゅっと唇を噛む。

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