雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 正装をまとった年かさの男性が、恭しく璃鈴を迎えた。璃鈴も無言で挨拶を返す。


 馬車を降りて花嫁の手を引くのは、本来なら花婿の役目だ。手を引くのは名代でも構わないが、花嫁が最初に口をきくのは花婿でなくてはならない。

「皇帝陛下もお待ちでございます。まいりましょう」

 立ち上がった余揮の後について、璃鈴は大勢の衛兵の間に敷かれた赤い布の上を歩いていく。長い廊下と階段を歩いて、璃鈴の一行はある扉の前にたどりついた。

「こちらへ」

 余揮がその扉をあける。そこは婚姻の儀が行われる大広間だった。中にはすでに大勢の官吏や貴族などの人々が集まっている。

 入ってきた璃鈴に、広間にいた全員の視線が集中した。


 雨の巫女。伝説の、神族の娘。
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