雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 一通りの舞が終わると、娘たちはその場に平伏した。長老が声をかける。

「お前たち、顔をあげなさい」

 娘たちが、ゆっくりと顔をあげる。どの顔も緊張にこわばっていた。

 目の前にいるのは夫となるかもしれない男だが、機嫌を損ねればこの場で手打ちになるかもしれない可能性もある。巨大な国を束ねる皇帝は、そうできるだけの権力を持っていた。

 緊張する巫女たちを長老が端から紹介していくが、龍宗は適当に聞いていた。



「璃鈴にございます」

 最後に名を呼ばれたのは、先ほどの一人だけ襟の色の違う娘だった。龍宗は、じ、と璃鈴を見つめる。璃鈴も、その強烈な視線を真正面から受け止めた。

(なにもかもが強烈な人)

 それが、璃鈴が最初に感じた龍宗の印象だ。
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