雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 心配していた初夜を無事に乗り切ったことで、璃鈴の心には少しだけ余裕が生まれていた。怖いと思っていた龍宗だが、璃鈴のことをちゃんと気遣ってくれる人だということもわかった。

(もっとお話をしたい。そうしたらきっと、陛下に近づける気がするもの)



 起きてきた璃鈴を見て、一瞬だけ秋華は動きをとめる。

「……どうかした?」

「あ、いえ」

 璃鈴の寝衣の胸元は、夕べ龍宗に開かれたままになっていた。そこにあった朱色のしるしに、秋華は頬を染める。璃鈴より年上の秋華は、初夜の床で何があるのかを詳しく知っていた。だが、褥を片付けようとして、そこに乙女の印がないことに気づく。

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